2021年度 共同研究班 | |
代表者 | 神戸市立工業高等専門学校 小澤 正宜 講師 |
構成員 | 神戸市立工業高等専門学校 清水 俊彦 教授 神戸市立工業高等専門学校 Amar Julien Samuel 助教 神戸市立工業高等専門学校 酒井 昌彦 准教授 神戸市立工業高等専門学校 尾山 匡浩 流通科学大学 山川 拓也 准教授 |
研究の目的及び意義
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ロボットは少子高齢社会対応,環境問題,災害対応への期待が高く,普及の戦略も考えた取り組みが必要とされている(ロボット白書2014).現在,神戸市ではロボットを用いた業務省力化の実現という将来構想を描いており,そこに神戸高専で開発した自律移動ロボットを適用しながら実現への道筋を確認している.具体的には神戸市港湾局ならびに神戸市建設局との連携により,神戸の市街地におけるロボットの実用化に向けた各種検討を進めている。 ロボットの活用に関しては従来的に生産性の向上が主たる目的とされてきたが,近年ではロボットを介して社会との繋がりを創出する新たな取り組みも生まれつつある(経済産業省『ロボットによる社会変革推進会議報告書』,2019).今後,地域社会の中でロボットによる価値創出がより大きく求められるようになると考えられるが,現時点では個別のロボットに備わった機能性に基づく限定的な価値創出に留まっている。 ところで,少子高齢社会対応という点では,観光が果たす役割も重要と考えられている.少子高齢化社会を迎えるにあたり,観光振興を基軸にした地域づくりの必要性だけでなく,「観光立国」(引用)をもとにする新しい地域文化の創造が求められている(石森,2008).一方,昨今は大量消費型のマス・ツーリズムに対置するものとして,多様な観光形態が模索されている(山川・中尾,2021).その一形態である「観光経験としての生活文化体験」は,現代的な観光のトレンドとして世界的に認知され,日本国内でも成熟した外国人旅行者たちによって積極的に実践される観光スタイルになりつつあった(山川,2018).山川によれば,観光経験としての生活文化体験は,「旅先での異日常経験の創出」を意味するものである.その中では,地域で営まれる日常そのもの地域資源と捉え,更には観光資源として転用することが必要となる。 先述の神戸市のロボットを活用した取り組みは,いわば「近未来の日常」を今に表現する事業であり,その領域も直接的で限定的な観光シーンに限定されるものではない.我々は,ロボットを「近未来にある日常的な地域資源」と捉え,そこに観光的価値を付与することで神戸市における新たな観光資源として認識・発展させることができないかと考えた.そこで本研究では,学園都市を拠点とする6名の研究者の専門分野(ロボット工学=小澤・清水・酒井・尾山・Amar,観光マーケティング=山川)から,地域資源としてのロボットの観光資源化につき,神戸市内ならびに大阪市内で行うロボットの実地動作試験結果をもとにして,観光的価値の分析と評価を行う.その結果を踏まえ,地域資源としてのロボットがもたらす神戸観光の未来像を提示し,将来的な神戸市の観光に示唆を与えようとするものである。 観光におけるロボットの活用はこれまで,宿泊施設のフロント・客室(例:変なホテル)や観光地の案内(例:JTBのRoBoHoN)に関する業務等,観光客に対する直接の人的サービスの代替機能と考えられ,開発が進められてきた.観光研究においても,スマートツーリズムの名の下,ICTやAIを含むロボット類の活用に関する研究,非接触機器の活用に関する研究等が進められている(村山,2020).しかし本研究は,ロボットの観光資源化という点において他の既存研究と一線を画するもので新規性があると考える。 |
研究実績・成果 | 研究成果 |